ニュース~規制強化でFC紛争防止 中小企業庁と公正取引委員会が加盟店保護策を拡充(日経ベンチャー/起業家情報センター/井本剛司)

フランチャイズチェーン(FC)本部と加盟店の間でトラブルが増加するなかで、中小企業庁公正取引委員会が相次いで、加盟店保護策の強化に乗り出した。

 中小企業庁では、四月にも中小小売商業振興法のFCに関する施行規則を見直す。従来は小売業と飲食業のFCに対して、本部の概要、契約内容などの情報開示を求めていたが、それでは加盟店保護が不十分だと判断。サービス業も対象に加え、開示項目を大幅に拡充する。

 開示すべき項目として新たに追加されたのは、直近三年間の損益計算書貸借対照表、加盟店数の推移、直近五年間に加盟店から提訴された紛争の件数など。また、従来、開示内容の詳細な取り決めはなかった加盟金やロイヤルティーなど金銭のやり取りに関する情報については、金額や算定方法、決済方法など具体的な項目を指定した。

 一方、公正取引委員会も、「独占禁止法の違反行為を未然に防ぐ」という観点から、FC加盟店の保護策を充実させる。四月をメドに独占禁止法ガイドラインの改訂作業を進めており、その中で「優越的地位の濫用」に該当する本部の行為を明示する。

 ガイドラインには、「本部が立ち上げる新業態への加盟を既存加盟店に強制していないか」「本部から仕入れる商品の数量を強制したり、取引先を不当に制限していないか」といった内容が新たに付け加えられる。

 FC加盟店向けにコンサルティングなどを行う起業家情報センター(東京都千代田区)の井本剛司社長は「加盟店を集める際、業績や店舗数などについて不正確な情報を公表したり、不利な契約を結ばせる本部が少なくない。それが後々、本部と加盟店の間でトラブルが発生する大きな要因となってきた。今後はこうした行為は減って、悪質な本部の淘汰が進むだろう」と、こうした動きを歓迎する。

 ただ、フランチャイズ総合研究所(東京都港区)の羽田治光社長は「加盟店保護の仕組みを確立している米国に比べ、日本の取り組みはこれでも不十分な点が多い」と強調する。

 米国では、FTC(米連邦取引委員会)が本部に対し、会社の破産歴、募集広告に有名人を起用する場合に支払った報酬額といった非常に詳細な情報の開示を義務づけている。それに虚偽や不足があれば厳しい罰則もある。それに対して「中小小売商業振興法の施行規則の開示程度は一〇分の一程度に過ぎない」(羽田社長)。罰則も社名を公表される程度だ。

 結局、加盟者が本当にFCビジネスで成功しようと考えるなら、本部の情報開示に満足せず、自分でさらに詳細な情報を集め、不利な契約になっていないかについても納得いくまでチェックする必要があるだろう。

FCに関する法律見直しの主なポイント

FC経営者、「休みなし」3割――起業家情報センターが調査、週休2日はわずか8%。(日経MJ/井本剛司)

週休二日以上の休みを取るフランチャイズチェーン(FC)店経営者は八%――。

FC本部の情報を加盟希望者に提供するサービスを手掛ける起業家情報センター(東京・千代田、井本剛司社長)はこのほど、様々な業種のFC店舗にアンケート調査を実施した。FCの経営状態や経営者の生活実態を調査したもので、二十六日に開く「第一回全国FC店経営者セミナー&交流会」で詳しいアンケート結果を配布する。
 同社が運営し約三千八百のFC店舗が登録するフランチャイズ店経営者協会(同)が実施、全国三万のFC店舗に発送して千五百三十九店から回答を得た。脱サラ経営者の五四%が黒字経営で、サラリーマンと自営業出身の間にFC店の収益で大きな差はなかった。生活実態では、休みがまったく取れない経営者が三〇%、月に一日は一二%と厳しい状況を示した。
 成功を裏付ける第一の条件としては「好立地」が二八%、「自分の能力・努力」が一九%を占め、「本部の適切な指導」は七%に過ぎなかった。飲食店、サービス業、小売業(コンビニなど)の三分類の中では、小売業FCの赤字が三六%と一番高かった。
 従来のFCでは本部と加盟店をつなぐ縦の組織はあったが、起業家情報センターは異なる業種のフランチャイジー同士の情報交換を図ろうと、東京都内で初めての交流会を開く。コンビニや飲食店などのFC経営者約八十人が集まる予定。 

インタビュー/起業家情報センター・井本剛司社長「FC加盟店を支援」(日刊工業新聞)

起業家情報センター(東京都千代田区)が、フランチャイズチェーン(FC)加盟店支援サービスを拡充している。FC市場は企業のリストラ対策や起業志望者の開業手段として注目度が高く、市場規模は成長を続けているが、FC本部の説明をうのみにして安易に参入した結果、経営がうまくいかず本部とのトラブルに発展するケースも多い。こうした中、同社は99年にFC支援事業本部を設立、本部の実態調査請け負いを開始したのを皮切りにさまざまな加盟店向け支援サービスを提供している。井本剛司社長に事業の特徴や今後の戦略について聞いた。-FC市場の現状は。

 「市場規模は17兆円で毎年3000億-5000億円伸びている。FC本部数は日本フランチャイズチェーン協会発表で1000弱、当社把握で1500本部。店舗数は直営店を含めて約20万店舗近くある」

 -FC加盟店向け支援を始めるきっかけになったのは何ですか。

 「起業に関する相談を始めたところ、当初は財務や経理などの相談を予想していたが、ふたを開けてみるとFC本部とのトラブルに関する相談が多かった。売り上げ予測の相違、契約上のトラブルなどだ。こうしたトラブル回避のため、FC本部実態調査の請け負いを始めた。FCシステムは金さえ出せば成功するというものではない。きちんとした本部を選ぶ必要がある。ただ本部寄りの情報ばかりで客観的な情報は少ない。調査請負料は10万円。加盟に際して膨大な資金を投資することを考えれば安い」

 -具体的な事業展開についてはいかがですか。

 「調査請負は年間1000件の利用がある。また99年4月にはフランチャイズ店経営者協会(FOA)を設立した。加盟店同士はつながりがなく、悩みを相談する相手が少ない。また、こうした横のつながりを認めない本部も多い。そこで情報交換の場を提供する目的で設立した。会員数は5000人。年内には1万人にしたい」

 -昨年末には『FCコンサルティング・パッケージ』の販売を始めました。

 「加盟前から加盟後まで一貫して支援するもので、個人向けと法人向けがある。本部の財務内容、業績推移や加盟店の満足度などを調査したリポート提供、立地調査などのほか、契約時に弁護士を同席させるのが特徴。また青色申告などのアウトソーシングも行う。法人で赤字撤退した場合、料金は全額返済する」

 -今後の計画は。

 「4月に本部の格付け発表を始めるほか、本部と加盟店のトラブル仲介機関設立などを計画している」

 「当社はインキュベーション機能の強化に力を入れている。既に4社が独立、分社しており、FC支援事業本部もその一つ。(同事業を立ち上げた)現在のプロジェクトマネジャーが中心となり、いずれは分社化する予定」

 -最後にFC加盟の際に気をつけることは何ですか。

 「結婚と同じ。結婚を決めてから相手選びをする人は少ない。これと一緒で、まず起業ありきでなく、自分が何をやりたいのかを明確にすることが大事」

インタビュー 「格付けは成功を保証しない」 井本剛司 起業家情報センター社長(日経ビジネス)

 FCの格付けをしようと思った動機は、4~5年前からリストラされた中高年を中心にFCへの加盟者が急増したものの、各本部やチェーンの経営状況を客観的に比較できる情報がほとんどないために困っているという声を多く聞いたためだ。
 日本は世界第2位の「FC大国」でありながら、米国にあるような調査機関が存在しない。それならば自分たちでやってみようとなった。実際に格付け作業を始めてみると、情報開示を渋る本部が多く、業界の閉鎖性を改めて痛感させられた。その一方で、オーナーたちは横の情報交換を求めていることもわかった。
 格付けを見るうえで1つ注意してもらいたいのは、格付けが上のチェーンに加盟すれば必ず成功するとか、下だから失敗するということではないということだ。例えば、上場会社は財務を意識して経営しているので格付けが高くなり、逆に成長途上にある会社は利益を先行投資に回しているために格付けが低くなるといった傾向がある。若者に絶大な人気があるチェーンでも、まだ店舗数が少ないために格付けが下のケースもある。
 FCに加盟して保証されるのは「1つのサービスなり商品が安定して供給される」ことに過ぎない。あくまで、加盟する個人なり会社のモチベーション次第である。
 今後は、各付けの対象チェーンを300社まで増やしていくとともに、今回の100チェーンについても継続的にフォローし、随時格付けを更新していきたい。この格付けの変動が最も貴重な情報になるはずだ。

経営ひと言/起業家情報センター・井本剛司社長「社長を増やす」(日刊工業新聞)

「社是は社長を増やすこと」とは起業家情報センター(東京都千代田区)社長の井本剛司さん。新事業を立ち上げて分社化を進めている。今年はすでにマーケティングリサーチ業などの会社を設立した。

経済誌などの記者経験からベンチャー支援制度に問題意識を持ち起業した。自ら創業当初の苦労を味わっているだけに、「部長、課長はあくまでポストでしかない。唯一無二の社長を生み、育てなければ」と続ける。

今年は業務を拡大したので、来年はそれぞれの社業を軌道に乗せる年と位置づける。「人が財産の会社。次の社長を生み出すための社員教育を徹底したい」と社内体制強化に向け一層気を引き締める。

起業家情報センター社長井本剛司氏――加盟希望者に苦言も(展望台)日経MJ

▽…「最近は我々の調査に対し、フランチャイズチェーン(FC)本部がだいぶ協力してくれるようになった」と語るのは、起業家情報センターの井本剛司社長。同社はFCに加盟したい人の依頼で、FC本部の実態を調査・報告する事業を九七年から手掛けているが、最近は「加盟希望者に推薦してもらおうと思ってか、FC本部の方から売り込んで来るケースもある」という。もっとも「調査に非協力的なFCであっても、実態が良ければその通り良い内容の報告書を出す。ちょっと悔しいですが……」と笑う。


▽…一方、FCの加盟希望者に対しては「安易な気持ちの人も多く、全財産を投入するかもしれないFC加盟金に比べはるかに安い十万円程度の調査料を出し渋る」と苦言を呈す。「本来、事業を始める人が自分で調べるべきことを我々が代行することで、甘やかしているのかもしれない」と、少々矛盾も感じているようだ。
【図・写真】井本さん 

起業家情報センター、FC本部を格付け、5月から――約50業種、7段階で。(日本経済新聞/井本剛司)

経営コンサルタントの起業家情報センター(東京、井本剛司社長)は五月から、コンビニエンスストアや飲食店など様々な業種のフランチャイズチェーン(FC)本部を格付けする事業を始める。本部が加盟希望者に出す情報だけでは、撤退率など重要な点が分からないためで、財務内容や加盟店の状況などを踏まえて年内に約五百本部を七段階で格付けし、加盟希望者や取引先に提供する。
 格付けのために社内に「フランチャイズデータバンク」と名付けた組織を発足。五月にまず約二百五十本部の格付け結果をホームページなどで無料公開する。本部や加盟店にインタビューした後、専門家を交えた業種別委員会を開き、評価を決める。対象業種はコンビニ、ハンバーガー店、居酒屋、学習塾など約五十業種。FC本部から協力を拒否された場合は周辺取材で“勝手格付け”をする。
 当初は一斉調査の形を取るが、将来はFC本部からの依頼に基づいた有料の格付けにする。またFC加盟者を対象にした「フランチャイズ店経営者協会」も四月一日付で発足。