起業家情報センター、FC加盟希望者に本音情報――評価点数化(探検ニューサービス)(日経MJ)

フランチャイズチェーン(FC)に加盟しませんか――。転職を考えている会社員や新規事業を検討中の企業にとってこんな誘いは魅惑的だ。ただ、FC本部の説明だけで加盟すると、後悔することになりかねない。起業家情報センター(東京・千代田、井本剛司社長)のフランチャイズ加盟調査は、そんな加盟希望者に本音の情報を提供するサービスだ。


調査結果を見て中止
 転職を考えていた東京・多摩市の会社員、Aさんがこのサービスを利用したのは今年二月。ある修理サービス会社のFCの説明会に参加、やってみようと思ったのがきっかけだ。ただ、加盟金は数百万円と高く、失敗したら痛手は大きい。そこでFCの雑誌で見つけた起業家情報センターに調査を申し込んだ。
 調査結果が返ってきたのは約三週間後。FC本部の評点が相当低かったほか、「加盟店へのバックアップがほとんどないことが強調してあった」(Aさん)。
 さらに加盟店数店への聞き取り調査結果によると、ほとんどの加盟店が赤字で、加入したことを後悔していた。「ライバル企業があまりない事業のため、十分に比較検討せずに決めてしまっていたようだ」(同)。この調査結果を見てAさんは加盟をやめ、会社勤めを続けている。
 こうした情報が求められるのは、FC本部には業種にかかわらず情報公開に消極的なところが多いためだ。井本社長は「タウンページや地図を使って調べると、店舗数すらうそをついていることがかなりある」と話す。ましてや失敗する確率である撤退率などを公表しているところはほとんどない。
 起業家情報センターの調査では、まず調査員が依頼者の事情を聴いた上で、FC本部や加盟店への聞き取り調査を実施する。FC本部が取材に応じる割合は約六割。応じない場合でも、取引先や金融機関など周辺からの取材で情報を集める。


信用度など多角的に
 最大の売り物は加盟店調査。一件の調査依頼について五―七店の加盟店を調査する。通常は五店に取材を申し込むと二、三店は協力してくれるという。調査に協力しないように加盟店に呼び掛けているFC本部もあるが、「逆にそういう本部の方針に反感をもって取材に応じてくれる加盟店もある」と井本社長は笑う。
 本部や加盟店一店への取材時間は一件につき約三時間で、すべてテープレコーダーに録音する。
 調査の結果、本部の総合評価を百点満点で採点するほか、加盟店の状況、信用度、資金状態など様々な点について評価を下す。業界誌の記者や専門家から業界自体の成長性なども取材し、二十ページ程度のリポートに仕上げる。
 調査料金は一件につき十万円で、これまで件数で五百件、FC本部数にして約三百本部の調査を手掛けてきた。現在のところ個人からの依頼が八割以上を占めており、コンビニのほか、クリーニングやリフォームなど実態の見えにくいサービス業に関する調査依頼が目立つという。


格付け作業に着手
 井本社長はまだ二十七歳の若手起業家。業界誌記者を経て、ベンチャー支援などを手掛ける起業家情報センターを九五年九月に設立。FCビジネスに関する情報が少ないことに目を付け、調査を事業化した。
 かつてコンビニ業界で加盟店と本部とのトラブルが社会問題となったが、井本社長は「コンビニは比較的体制がしっかりしている方。他の業種のFCにはもっとお粗末なものが多い」と話す。同社はFC本部の格付けという新たな作業にも取り掛かっており、FCの調査を軸に事業を広げていく考えだ。

1件の依頼について5―7店の加盟店から調査する
【サービス概要】
名  称 フランチャイズ加盟調査
内  容 フランチャイズ加盟を検討している個人や企業の依頼を受け、FC本部やその加盟店を調査
営業状況 97年6月に開始。これまで約500件の依頼をこなす