特集 コンビニの未来~人気1位はモスバーガー(日経ビジネス/起業家情報センター/井本剛司)

消費者から最も高い支持を受けているフランチャイズチェーンは、モスバーガー――。

 東京、大阪、名古屋の消費者1500人にアンケート調査(回答者800人)し、主要フランチャイズチェーンを「認知度(知っている、知らない)」「利用度(利用したことがある、利用したことがない)」「満足度(満足した、不満だった)」「再利用度(今後も利用したい、利用したいと思わない)」の4つの指標で評価してもらったところ、昨年(1999年5月24日号)7位だったモスバーガーが1位に躍り出た。

 同チェーンの経営戦略については44~45ページにまとめたが、アンケートでは利用したことがある消費者の満足度が特に高く、「とても満足した」「まあ満足した」を合わせると84.4%に達する。また、総合ランキングの評価項目以外に、業態別の評価ポイントを聞いたところ、外食チェーンの中でモスバーガーは「好きなメニューが多い」「料理の味が良い」でトップの評価を受けている(42ページ図)。

 昨年に続き2位のミスタードーナツも、モスバーガーに次いで利用客の満足度が高く、3位のマクドナルドは認知度と利用度、それに再利用度が高い。マクドナルドに関しては「価格が妥当である」「新メニューの開発に熱心だ」「店員の接客態度が良い」という項目でも高い評価を受けている。

 コンビニエンスストアでは、総合4位のローソンがトップになっているが、地域別に見ると少し様子が違ってくる。東京地区(回答数444人)ではセブン-イレブンがトップ、大阪地区(250人)ではローソン、名古屋地区(106人)ではサークルKがそれぞれコンビニの中でトップになっており、各地域で出店数の多いところが、認知度と利用度で点数を稼いでいる格好だ。特に東京地区ではセブン-イレブンが総合でもモスバーガーを抑えてトップになっている。

 その他小売業では、急速に店舗数を伸ばしている100円ショップダイソーが昨年の25位から9位に浮上し、昨年ランキング外だったマツモトキヨシユニクロが20位前後に登場した。マツモトキヨシは「欲しい商品が置いてある」で、ユニクロは「価格が妥当である」でそれぞれ1位の評価を受けており、今後の出店地域の拡大に伴って更に順位を上げてこよう。

 サービス業は利用頻度が少ないことなどから、総合ランキングに登場したのはレンタルビデオチェーンのTSUTAYA(13位)のみだが、「時代が要請するサービスを手がけている」「サービスや技術の質が高い」では、ダスキンに対する評価が高かった。

 「フランチャイズチェーンを利用して嫌な思いをした経験」を自由に記入してもらったところ、「店員の接客態度が悪い」という苦情が圧倒的に多く挙がった。具体的には「接客がマニュアル通り過ぎて味気ない」とか「アルバイト店員が無愛想」な点に不満が集中した。また、外食業に関しては「料理が出るまで長く待たされた」「同じチェーンなのに店によってサービスや味が違う」「居酒屋チェーンは店内や食器が不潔」など、細かな不満が多く寄せられた。

 更に「通路が狭かったり段差が多く車イスで利用できない」「高齢者にはメニューがわかりにくく、注文の仕方が難しい」といったバリアフリーや高齢者対応などへの要望や、「過剰包装をやめてゴミを減らしてほしい」「深夜に若者がたむろして騒いだりして治安が悪くなった」といった環境への配慮を求める声など、時代の要請ともいえる注文も目立った。

 また、コンビニの新サービスに関して、「チケットの購入の仕方を聞いても知らない店員がいる。新サービスを導入するなら、ちゃんと店員教育をしてほしい」という注文がついた。消費者にとっては、家などの近くにあって普段利用する店の印象が、そのチェーン全体の印象になる。店の運営はアルバイトやパート店員に頼らざるを得ないだけに、教育研修によって接客の質を向上させることが、チェーンのイメージを高めるための最大の課題である。

 「フランチャイズのお店はあらゆるところにあるので、その差は店員の接客態度で決まると思います。商品を一緒に探してもらったり、ちょっとしたアドバイスをもらえるととても嬉しかったりします」という意見に、すべてが集約されている。

オーナー調査でFC本部を格付け

加盟店の裁量利く中堅チェーンに高い評価

 フランチャイズ加盟店は、自らが運営する店の経営状況や、本部の指導などに対して、どのように評価しているのだろうか――。

 FC加盟希望者にとって気になるのは、既に開業したオーナーたちの「満足度」だ。それを調査している会社が、FCビジネスでの開業を目指す脱サラ起業家などを対象に、経営コンサルティングを行っている起業家情報センター(東京・千代田区)だ。同社は1本部につき5~7人の加盟店オーナーに対する面接調査や、本部の経営データの分析などを基に、日本では初めてとなるFC本部の“格付け”に取り組んでいる。

 この調査のなかで加盟店の業績、ロイヤルティー、本部の説明、仕入れシステムの状況など、9項目に対するオーナー自身の評価をまとめたものが、右の「加盟店オーナーの満足度ランキング」だ。それぞれの項目を5点満点とし、オーナーの評価によって満足度を点数化する。例えば、加盟店の業績では順調が5点、堅調が4点、横ばいが3点、不振が2点、撤退準備が1点となる。

 業種別に見ると、コンビニ部門では、中部・関西を基盤にする中堅のココストア名古屋市)、物販・サービスではプラザクリエイトのDPEチェーン「フジカラーパレットプラザ」が1位となった。また、飲食チェーンでは、関東を中心に展開するキッチンジロー(東京・千代田区)が首位に立つなど、各業種とも中堅企業が上位に並ぶ。

 起業家情報センターの井本剛司代表は「加盟店満足度に焦点を当てると、必ずしも大手が上位に来るわけではない。出店地域の選定や運営面などで、加盟店が独自の裁量をある程度発揮できる中堅チェーンの方が満足度が高くなる傾向が見られる」と指摘する。本部の知名度とオーナーの満足度が比例するとは限らないようだ。

 一般に、加盟店の指導や商品供給などのシステムが整っていると言われるコンビニを見ると、オーナーの満足度が飲食、物販サービスなどの業態に比べて相対的に低くなったのも特徴だ。

 これについて井本氏は「4、5年前までに比べて競争が激しくなり、加盟店の儲けが少なくなっている。『不満というわけではないが、以前よりも満足はしていない』という意見が目立った」と説明する。

 起業家情報センターはこれらの調査結果を土台に、経営コンサルタントやアナリスト、大学教授など専門家の評価を加味して、最終的にA~Eの5段階でFC本部を格付けする。今年5月にまず、全国約250本部の格付けを発表し、秋には更に約250本部について格付けする計画だ。

消費者が選ぶベストチェーンランキング

【消費者ランキングの方法】

 日経リサーチのファクス調査システムを利用し、東京、大阪、名古屋地域に住む10代から50代までの男女それぞれ750人、合計1500人に対し、主要なフランチャイズチェーンのリストを提示したうえで、店名を知っているか、知っている場合には利用経験と満足度、再利用意向を聞いた。ランキングはそれぞれの指標に「はい」と答えた人の割合(%)を合計(満足度については「とても満足した」200点、「まあ満足した」100点で配点)して作成した。総合得点は600点満点。42ページの「業態別評価ランキング」は、各評価項目に該当すると思われるチェーン名を自由に記入してもらった。

 調査の実施時期は1月4日~28日、有効回答者数は800人(回答率53.3%)。’加盟店オーナーの満足度ランキング

注:加盟店の業績、本部の説明など9項目を調査、満点は45点

出所:起業家情報センター