第2特集-本邦初!フランチャイズ100社格付け Aランクは15チェーン-コンビニ強し、吉野家が唯一のトリプルA(日経ビジネス/起業家情報センター/井本剛司)

日本初の試みとなるフランチャイズチェーン(FC)の格付けがまとまった。起業家情報センターが2年越しで取り組んでいたものだ。本部と加盟店の双方から集めた情報で客観的な評価をした。セブンイレブンユニバーサルホーム吉野家などの評価が高い。情報開示が進まないFC業界に風穴を開けるきっかけになりそうだ。


Aランクは15チェーン
本部、加盟店双方の取材を基に評価
 米国から日本にフランチャイズチェーン(FC)が上陸して約30年。現在、FC本部の数は約1500あると言われる。しかし、株式を上場している企業は別として、その多くは開示される情報が少ないために経営実態がよくわからないのが実情だ。そのため、FCへの加入を考える個人や企業にとって、客観的な判断材料が乏しいという問題があった。
 そこで、起業に関する情報サービスを手がけている起業家情報センター(東京・千代田区)では、FCを格付けすることによって、本部の客観的な実力を明らかにしようと試みた。
 格付けの対象は、直営店が10店以上、FC店が最低14店舗以上あるなどの条件で300本部に絞った。そのうち、今回は分析作業が終わった100本部について発表にこぎつけた。
 格付け作業は本部と加盟店双方からの情報収集から始まった。本部には調査表を送ったうえで、実際に経営者や担当者へのヒアリングをして精査した。また、加盟店については22人の調査員を全国に派遣し、1本部について最低7店舗(立地や規模など本部の推奨する条件に近い店)から経営状況や本部への評価などについて取材した。格付けの評価基準の選定に当たっては、コンサルタントやアナリスト、大学教授など延べ34人の専門家からも意見を集めた(格付けの評価基準、専門家リストは67ページ参照)。業種別のポイントは次の通り。


コンビニ・その他小売業
 格付けの上位を大手のコンビニエンスストアが占めた。「本部収益力」「安全力」などでは他の小売りと各段の差が見られる。特に、業界トップのセブンイレブンの強さと、サークルKの健闘が光る。逆に、業界2位のローソンは、「本部収益力」と「安全力」の低さが響いて格付けも低迷した。
 コンビニの多くで「商品収益性」にCがついたのは、判断基準に採用した経営指標の中で、「売上高総利益率」よりも「商品回転率」を重視したため。商品の回転が速ければ、より消費者の支持を得ていると判断したものだ。従って、個々の商品の味や質の差を表すものではない。


サービス業
 財務的に弱い本部が多いため、全体的に格付けが低くなっている。その中で唯一、住宅メーカーのユニバーサルホームがAランクに入った。これは、FCの加盟対象が個人ではなく工務店だという事情がある。また、加盟審査の際に工務店の財務諸表をチェックし、3期連続黒字を条件にしていることから、加盟店の経営も安定していることが評価を高めた。


飲食業
 吉野家が全業種で唯一トリプルAとなった。商品の回転率や粗利の高さが群を抜いている。サンマルクレストランチェーンは、メニュー価格の高さから一時期競争力が弱まっていたが、原価低減の努力によって価格を下げ、客足が戻ってきたことが評価された。
【格付けの方法】
 FC本部を格付けするために収集、集計、分析してきた調査結果を5つに分類し、各項目の判断基準として以下の2つの経営指標を採用した。
〓 本部収益力
・本部売上高営業利益率(%)
・本部1人当たり当期利益額(万円)
〓店舗力
・加盟店1店舗当たり売上高(万円/年)
・直営店1店舗当たり売上高(万円/年)
〓SV体制
・SVの加盟店訪問回数(回/月)
・SV1人当たりの担当店舗数(店舗/人)
〓商品収益性
・本部商品回転率(回/月)
・本部売上高総利益率(%)
〓安全力
自己資本比率(%)
・インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
 次に、各々2つの経営指標の平均値を主軸と副軸にとったマトリクスを作り、さらに平均×0.5と平均×1.5の2本の補助線を引いて16のブロックに分け、各本部の数値をプロットした。なお、マイナス値に対しては評点を0とした。また、本部からの情報公開が得られず、調査が不可能となっているものに対しても評点を0とした。この分布を基に、格付け対象となった100のFC本部について〓~〓の項目に対し、16~0の17段階評価を行った。従って、評点の上限は80点となる。
 こうして出した総合評価を、最終的な格付けの符号に置き換えた。格付けは原則としてAAA~Eランクの7段階評価とした。ただし、AA~Eの6段階においては、上位のものにはプラスを、下位のものにはマイナスを付加した。格付け符号の基準は、左表の通りである。