FC加盟店業況調査報告書、1539店にアンケート(日本食糧新聞/起業家情報センター/井本剛司)

(株)起業家情報センター(東京都千代田区)は、フランチャイズチェーン(FC)加盟店を対象にした「FC加盟店業況調査報告書」をまとめた。アンケート用紙を全国のFC店五万店に送付、10月1日現在の有効回答一五三九店のアンケート結果を分析したもの。同社は来春までに一万店を調査目標とし、引き続きアンケートの回収を続ける。(以下、同報告書抜粋)


◆成功オーナーと失敗オーナーの認識

グラフ2「売上げは開業前の期待と比べてどうか?」に対して、全体の六七%のオーナーが「期待より低い」とし、「期待通りかそれ以上」と答えたのは三一%であった。
「期待通りかそれ以上」と答えたオーナーにその要因を複数回答で挙げてもらった結果の上位三位は以下の通り(一人平均、三項目の回答)。
1、立地が良かった(二六%)
2、自身の努力の成果(二一%)
3、商品・店舗に魅力があった(一六%)
一方、「期待より低い」と答えたオーナーの要因の上位三位は以下の通り(一人平均二項目の回答)。
1、売上げ予測が高すぎた(二二%)
2、立地が悪かった(二〇%)
3、業界が縮小傾向・本部の指導が悪い(ともに一三%)
これらの結果からそれぞれわかることは、成功するために必要な事項は立地、自助努力、本部のノウハウとなるが、見込み通りの売上げが上げられないオーナーの意見として挙げられた要因の上位三位の中には、「自助努力」が入っていないことがわかる(「自身の能力・努力不足」は一一%で五位)。
これからいえることは、見込み通りの売上げを上げられないオーナーは、本部の所為、立地の所為、業界の所為を前面に掲げ、自身の努力不足に対する認識が低いことである。


◆脱サラオーナーの経営実態
当統計では、脱サラオーナーに焦点をあて経営実態についてアンケート結果を集積した。
「脱サラオーナーの経営状況」のデータをみていくと、収支均衡を含めた七〇%のオーナーが「経営継続可能」と答えている。経営者としての資質を問われがちな脱サラオーナーだが、全体的に健闘している。この背景にはFCシステムの向上と加盟店オーナーのレベルアップがうかがえる。
経営不能に陥っている脱サラオーナーも一二%に上り、FC加盟による独立開業だからといって、安易なFC選択は危険であるといえる。
「脱サラオーナーの経営実態」をみていくと、「期待したほどではない」が四一%と最も多い。この背景には、脱サラして初期投資をしたにもかかわらず、開業前に当初予想していたよりも、儲かっていないと感じているオーナーが多いことが挙げられる。脱サラオーナーの経営状況からわかるように、期待より上回っているのは、一一%であり、FC加盟に対して、過度の期待をしているといえる。
「脱サラオーナーの生活実態」をみていくと、一般的サラリーマンと同様に週二日以上の休日を安定的に確保できているオーナーは九%とごく一部にとどまっている。一方で休みの全く取れないオーナーは二六%にも上っている。これは人件費を圧縮するためにオーナー自身の労働力が不可欠であるという現状を示している。事業主として生じる責任範囲はサラリーマンと比べ大幅に拡大し、常に現場を管理していなければならない状況がうかがえる。
「黒字経営をしている脱サラオーナー」のうち、「まあまあ」を含めた六六%の過半数のオーナーが本部に対して一定の評価を与えている。「比較的レベルが低い」「非常にレベルが低い」と本部への評価が低いものが、四五%となり黒字経営をしていても必ずしもFC本部の評価をしているのではないということが読み取れる。FC本部の支援にばかり頼るのではなく、オーナーの自助努力が必要であるということがこの結果から言えよう。
「黒字経営の脱サラオーナーの本部への要望」としては、「商品開発」が五二%と最も割合が高かった。ここからと読み取れることは、黒字経営の脱サラオーナーが商品力を最重要項目として捕らえていることがわかる。これは裏を返せば、本部から供給される商品に対して、本部の役割と加盟店の役割をはっきり分担し、最も重要な商品開発に注力して欲しいとの意識があるものと思われる。
また、「販売指導」一七%、「経営指導」一二%となり、本部からの支援体制の強化を黒字経営の脱サラオーナーは求めている。
脱サラオーナーは、経験の少なさから失敗例も多いのではないかとの声もあったが、収支均衛を含めた七〇%のオーナーが「継続経営可能」と回答し一人の経営者として順調に経営している。この背景の大きな要因として、サラリーマン時代よりも休日が減っていることも見逃せない。休日を返上して働くことによって、利益を確保しているのである。FCシステムの向上という要因によって、経営がうまくいくという要素も挙げられるが、オーナーとしては、「商品開発」、SVのレベルの向上などを切望し、より一層FC本部のレベル向上が望まれる。


◆業種別にみるオーナーの実態と経営状況
当統計では、業種を小売業・飲食業・サービス業の三分野に分け、それぞれの分野でどのような傾向がみられるのかを表した。
FCの業界の中で一番黒字化しているのはどの業種であろうか。
「小売業」「飲食業」「サービス業」の『経営状況』をみてみると、以下のような結果になった。「かなり黒字」「弱冠黒字」「収支均衡」までを経営の継続が可能と判断すると、サービス業で八二%、飲食業で七一%、小売業で六四%を占めた。逆に赤字の割合は小売業三六%、飲食業二九%、サービス業一八%となった。小売業は、赤字の割合が最も多くサービス業の二倍の数値となった。
では次に、「小売業」「飲食業」「サービス業」の『オーナーの勤務時間』からみられる各業種ごとの休日の取得状況はどうであろうか。
小売業は「なし」が四一%と最大の割合を示す。全体と比較しても「なし」の場合は一一%ほど高い。小売業の勤務時間の長さが目立っている。飲食業においては、週休一日、なしが二九%と同率で一位、サービス業は週休一日が六〇%と過半数を占め、なしと答えたオーナーはわずか一%であった。
次に「小売業」「飲食業」「サービス業」で『一日の総労働時間』を聞いた。
小売業では一日八~一二時間未満の労働時間が六〇%と最も多く、以下一二時間以上二一%、五~八時間未満一六%と続く。飲食業でも八~一二時間未満が最も多く三八%、僅差で一二時間以上が三六%と続く。サービス業でも八~一二時間未満が六〇%と過半数を超える。続いて、五~八時間未満二二%、一二時間以上一〇%と続く。
総じて、サービス業が他業種に比べると休日も取れている結果となった。


◆開業年数別今後の経営発展に必要なもの
当統計は、「今後の経営発展にオーナーは何を必要としているか」を開業年数別に集計した結果である。
加盟店の各開業年数において一、二位を「商品力」または「資金力」が占めており、この二つについては共通の必須要素となっている。一方三位以下については違いが見られ、三年未満のオーナーは「経営者の知識」を重要視している。
三年以上のすべてのオーナーは三位と四位に「売るためのノウハウ」「従業員の管理」を挙げ、三年未満のオーナーと明確な違いがみられる。つまり経営発展に必要なものは開業年数を問わず、「商品力」「資金力」である。そして開業当初は「知識」を重要とし、その後実務上に必要である「売るためのノウハウ」「従業員の管理・確保など」が順位として上位になる傾向があることがわかった。