特集 FC活用の極意教えます~今後は「個人店+FC店」が注目 進む情報公開も追い風に(日経レストラン/起業家情報センター/井本剛司)

■このように,企業でも個人でもFCをうまく活用して売り上げを伸ばしているところは少なくない。FCチェーンに関する情報公開も進みつつある今だからこそ,選ぶ際には十分準備したい。

 フードコンサルタント宇井義行氏は,「今後,FCはもっと伸びるだろう」と見る。FCの利点は,「始める前から,店の出来上がりの形が分かっていることと,一定の売り上げ確保までの時間が短くて済むこと」(宇井氏)。こうしたメリットを生かして,個人店をFC店に業態転換して売り上げアップを図る,あるいはFC店を多店舗展開するという例はさらに増えそうだ。

 特に今後,注目されるのが,「個人店+FC店」というパターン。自分の店が成功し,事業拡大を図りたいと考えた時,同じ業態では近くに出店できない。だが,他業態となるとノウハウがない。そこで,FCに加盟することで,自店の近くで目が届く範囲に他業態の店を出し,手堅く売り上げを伸ばすという図式だ。

立地は自分の目で確認を

5月にはFC格付けも公表

 現在,飲食関係の主なFCの数は368チェーン,店舗数は4万5039店(99年3月末,日本フランチャイズチェーン協会調べ)。この2~3年は,「毎年50社程度が廃業し,50社ほどが新規に募集を開始するという具合で,トータルの数はほぼ横這い」(フランチャイズ研究所=東京都日野市,黒川孝雄社長)という状況だ。

 これだけの数の企業があれば,当然,すべてが「儲かる店」を作れるとは限らない。飲食業界ではFCのトラブルは比較的少ないものの,元オーナーが昨年,共同で「閉店に追い込まれたのは本部の責任」と日本サブウェイ(東京都港区,高原洋社長)を訴えた例は,記憶に新しい。

 東京都内で小規模の洋食系チェーンのFC店を営業していたあるオーナーは,次のように失敗談を語る。「加盟したのは89年と少し前のことになるが,開店以来,実際の売り上げは本部の提示した売り上げ予測の半分程度。ずっと赤字続きで,1年近く前,ついに閉店した。近隣に競合店が多く,立地に問題があったことが後になって分かった。本部もそのことを知ってはいたが,少しでも多く加盟させて会社の実績を伸ばしたかったようだ」。

 FCビジネスにかかわる起業家などを対象に,調査やコンサルティングを行っている起業家情報センター(東京都千代田区)の井本剛司社長は,「FC店が成功するか否かの要因は,立地が半分,本部の力が半分。本部もビジネスなので,1店でも多く加盟を募りたいのが実情。結果的に,立地に関しては,本部の調査はいいかげんなことも多い。そのため立地調査は自分でも十分に行った方がいい」と強く訴える。

 また黒川社長は,「売り上げが伸びない場合の対策がどうなっているかを,事前にしっかり確認すべき」と話す。

 FCチェーンの経営状態に関する情報は,なかなか入手しにくかったが,このところ,データベースなどの整備も進んできた。通産省日本フランチャイズチェーン協会に委託し,1000チェーン以上の情報を網羅したデータベースを立ち上げ準備中。今月からインターネットで公開し,調べられるようにする。

 また,起業家情報センターでは,5月にFCチェーンの格付けを,ホームページ上で公開する予定だ。加盟店オーナーの満足度と,本部の態勢を総合評価して,AAA,AA,A,B,C,D,Eの7段階にランク付けする。

 FC加盟を考える際には,多方面からの情報収集が欠かせない。情報公開が進んできた今こそ,これらをうまく利用して,出店の際のリスクは極力減らしたいものだ。

■加盟店オーナーの満足度ランキング

 表は,起業家情報センターが実施している調査結果を抜粋したもの。1チェーンにつき,5店の加盟店オーナーに聞き取り調査を行い,その内容を点数化した。内容は次の10項目で,各5点満点。加盟店業績,本部説明,本部方針,スーパーバイザーのレベル,利益の確保,ロイヤルティー,予測と現実(加盟の前後で収支予測などにどのくらい差があるか),仕入れシステムの管理,顧客信頼度,技術的(商品的)信頼度。同社が調査した外食企業70社のうち,宅配店と弁当店を除く42社をランキングしたもの。

 調査した加盟店からは,良い点,悪い点両面の意見が寄せられており,「味のこだわりとサービスで差別化できていると思う。ただ,本部が時代に応じた新しい対応を打ち出さないので,自分たち加盟店側との信頼関係は薄らいでいる」(モスバーガー),「チェーンの集客力があり,お客は他店へ流れても戻ってくると思う。本部の了解なく独自でメニューを提供すると,厳しい処分がある」(ちりめん亭),「認知度が非常に高く,味の良さには満足。スーパーバイザーは自分が気付かない点を指摘してくれるので,経営改善に役立つ。長時間労働で大変だが,後悔はない」(ニンニクげんこつラーメン花月)などの声が挙がっている。

 同センターでは,個別の調査依頼も受けている。1チェーンに付き5~7店舗の加盟店オーナーに聞き取り調査を行い,店舗の経営状況から,オーナーの睡眠時間などの生活に関する点まで,約300項目にわたって生の声を集める。費用は1チェーン10万円。